埼玉工業大(深谷市)が県内初の公道での自動運転の実証実験を進めている。同市特有の砂嵐や狭い道路に対応し、自動運転技術の精度を高める。今回の実証実験を通じて同市と連携しながら、自動運転分野の人材や関連産業を育成し、地域の発展につなげる狙いもある。(黄金崎元)
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先月から始まった実証実験では、トヨタのプリウスの改造車を使用。3次元レーダーセンサーとカメラが搭載されており、信号や人、障害物を読み取り、既存の地図との違いを判別してエンジンの始動や停止、ハンドル、ブレーキを自動制御する。
今回の実証実験では、同市特有の運転環境も研究開発に生かす。同市は関東平野のからっ風が吹き、砂嵐が舞うため、運転中に前方が見えにくくなる。大学周辺の道路は狭く、車がすれ違う距離が近いという。
また、工学部情報システム学科の渡部大志教授は「実証実験を始めたところ、逆光で信号が見えないケースも多い」としており、これらの課題を解決し自動運転の高度化を図る。
現在の段階では運転席と助手席に人が乗車し、緊急時を除いて自動で運転する「レベル3」で運行している。渡部教授は「実証実験が終わる来年3月末には、人が運転に全く関与しない『レベル4』を目指したい」と話している。
同大は平成28年に創立40周年を迎え、記念事業として「ものづくり研究センター」を新設。次世代自動車開発プロジェクトを立ち上げた。昨年10月には、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で、「自動走行システム」の大規模実証実験にも大手メーカーとともに私立大で唯一参加した。
自動運転車は将来性の高い分野。今後は自動制御技術に強い人材が求められており、渡部教授は「時代に合った形で1人でも2人でも多くの人材を育成し、この地域や社会全体に貢献したい」と話す。
同大と同市は実証実験を契機に県内外の企業とも連携し、自動運転関連の産業を育成したい考え。この取り組みで、地域の発展も期待される。