IOCは当初から一連の協議に前のめりだった。大会をめぐっては昨秋、フランス当局が選手の派遣見送りを示唆するなど、安全性を懸念する声が出ていた。国連制裁に抵触するリスクや「スポーツの政治利用」との指摘がある中での決定の裏には、目の前の大会を確実に開催したいとの思いも見え隠れする。
近年、ロシアのドーピング問題や委員への買収疑惑、五輪開催立候補都市の相次ぐ撤退など、IOCには逆風が吹いている。求心力低下に危機感を抱いたバッハ会長が、今回の「南北融和ショー」を利用したとの冷めた見方も出ている。
五輪は「平和の祭典」といわれる。その理念は尊く、否定するものではないが、今回の決定が真の「平和」に貢献するかどうか。疑問が拭えないままで平昌五輪を迎えることになった。(森本利優)