産経抄

安倍晋三首相の平昌五輪出席は論外である 1月19日

 4年前に台湾で大ヒットした野球映画「KANO」は、実話が基になっている。日本統治下時代の台湾では代表チームが、日本で行われる全国大会に参加していた。といっても、出場する選手はほとんどが日本人である。

 ▼昭和6年に台湾代表として甲子園の中等学校野球大会に初出場した、嘉義農林は違った。日本人、台湾人、台湾先住民からなる混成チームである。「意思の疎通ができるのか」。日本の記者から揶揄(やゆ)されながらも快進撃を続け、準優勝に輝いた。

 ▼来月開幕する平昌(ピョンチャン)冬季五輪をめぐって、韓国と北朝鮮は、アイスホッケー女子で合同、つまり混成チームの結成で合意した。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、「歴史の名場面になる」と選手に協力を求めている。もっとも、付け焼き刃の混成チームが五輪で活躍できるわけがない。

 ▼世界ランキングで韓国は22位、北朝鮮は25位である。「もともとメダル圏内にあるわけではない」。李洛淵(イ・ナギョン)首相の身も蓋(ふた)もない発言は、世論の猛反発を受けた。出場機会を奪われる韓国選手への同情の声もある。

 ▼開会式では、「統一旗」を先頭に両国が合同入場行進も行うという。「五輪に政治を持ち込むな」などと、建前論を主張するつもりはない。北朝鮮が非核化に前向きの姿勢を示すならば、五輪参加に意義を認めよう。その可能性はゼロである。核開発の時間稼ぎと、米韓同盟にくさびを打ち込む、北朝鮮の策略に利用されるだけ。韓国の親北勢力は納得の上だろう。

 ▼安倍晋三首相に五輪開会式への出席を求める声が、与党内からも出ている。論外である。慰安婦問題の合意についての、韓国への失望だけではない。茶番劇になりかねない平和の祭典に首相として関われば、北朝鮮の思うつぼだ。

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