肉や魚介類だけでなく、卵や乳製品など動物性の食品は一切口にしない。そんな完全菜食主義者「ヴィーガン」向けの料理を出す飲食店が増えている。ヴィーガンは「人間は動物を搾取することなく生きるべきだ」という考え方に基づく英国発祥のライフスタイルで、富裕層を中心に世界に浸透。日本では「健康的な食事」としても注目されるが、どんな料理なのだろうか。(藤井沙織)
◆最もストイック
菜食主義者というと「ベジタリアン」という言葉が浮かぶ。語源は「ベジタブル(野菜)」ではなく、「健全な」「生命力のある」という意味のラテン語だ。ベジタリアンの中には卵や乳製品は食べる人、肉は避けるが魚介類は食べる人などさまざまなタイプがいて、最もストイックなのがヴィーガン。NPO法人日本ベジタリアン協会によると「動物に苦しみを与えることへの嫌悪から動物性のものを利用しない人」であり、皮革やウールなども身につけない。食事だけヴィーガン式の人は「ダイエタリー・ヴィーガン」などとして区別するという。
「野菜だけで料理はいくらでも作れます」と話してくれたのは、発祥の地・英国で暮らすヴィーガンの女性(66)。「オリーブ油を使うカップケーキやカシューナッツで作るホワイトソースは本当においしいですよ」。英国ではヴィーガン向け食材が競って開発され、スーパーには肉の代わりに使う大豆ミートや植物性チーズなどが並んでいるという。