「法治国家で司法手続きに従うのは当然のこと。刑に不服はない。重要なのは吉田清治氏の嘘が判決文に盛り込まれているかだ」
奥茂治被告は11日の判決後、こう強調した。奥被告が謝罪碑の無断での書き換えに及び、出国禁止の長期化も覚悟して裁判に臨んだのは、慰安婦問題をめぐって日韓関係をこじらせた根本的な嘘を取り除きたいという思いからだった。
「苦にはならなかった。慰安婦問題をめぐる嘘を正すという目的があったので」。奥被告は、出国禁止措置により約200日に及んだ韓国生活をこう振り返った。「たとえ、実刑でも碑文の嘘が認定されれば、刑に服すつもりだった。その覚悟がなければ最初からやらない」とも語った。
ただ、11日の判決では、裁判官が理由などについて簡潔に読み上げただけで、判決の全文は手に入らず、嘘の認定があったかは確認できなかった。
判決後、日韓の報道陣を前に「訴えてきたのは『国の施設が嘘の碑文を使い続ければ、国際的な恥になりますよ』ということ。韓国では、慰安婦問題が吉田氏の嘘の証言から始まっていることがほとんど知られていない」と説明した。
地元メディアの記者からは「犯罪の事実と関係ないのではないか」との疑問も投げかけられた。検察も昨年12月の求刑で「慰安婦問題を歪曲(わいきょく)しようとし、韓日外交に摩擦を生じさせる」行為だとの見方を示した。取り調べでも背景を繰り返し説明したにもかかわらず、主張がくみ取られたとは言い難い。