【正論】祈りは遺伝子を「活性化」する 慈悲の心が免疫機能の強化につながる 筑波大学名誉教授・村上和雄(3/4ページ) - 産経ニュース

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正論

祈りは遺伝子を「活性化」する 慈悲の心が免疫機能の強化につながる 筑波大学名誉教授・村上和雄

 この調節にはさまざまな要因が関与し、いわゆる「心」の状態も「オン・オフ」に影響することが知られている。われわれはこれまでに「笑い」によって、2型糖尿病患者の食後血糖値の上昇が有意に抑えられること、免疫系の活性が適正化することなどを報告してきた。

 今回、「僧侶型オン遺伝子」として見いだされた遺伝子はいずれもI型インターフェロン関連遺伝子であった。I型インターフェロンはウイルスの増殖を抑えたり、感染した細胞を除去したりすることによって、ウイルスから身体を守っているタンパク質である。僧侶群におけるこの特徴は、僧侶になるための修行か、あるいは日常の行において獲得・維持された資質であると考えられる。すなわち、僧侶では自然免疫系が全体に活性化していると考えられる。

 一方で、僧侶は他人の感情や行動に対する共感の度合いが高かった。これは、僧侶の心理的な感受性の強さの表れといえる。本研究で最も興味深い結果とは、共感性と僧侶型遺伝子に一定の関連が見いだされたことである。僧侶における自然免疫系の活性化は、僧侶の身体的な感受性の強さの表れの一つとして捉えることもできる。

 ここから、共感という心理的な感受性と、自然免疫機能という身体的な感受性に共通の基盤があることが推測される。これは、身心の関連を考える上で大変興味深い結果であり、宗教性や祈りがそのような身心基盤の成立に関わっていることが推察されるのである。