「官僚OBとのコネ」誇示…巧妙な手口
架空の国有地売却計画をめぐっては、過去に10億円超の被害を出す詐欺事件に発展したケースもある。「中央省庁にパイプを持つ官僚OB」に、「複数の官僚OBが所属する法人」-。関係者の証言からは、さまざまな舞台装置を使って金をだまし取ろうとするブローカーらの巧妙な手口が浮かび上がる。
「いい投資話がある」。平成29年の暮れも押し詰まった12月中旬、都内に住む50代の投資会社社長は知人からこう持ちかけられた。「詳しい内容を知っている」として知人から紹介されたのは、「田中」と名乗る初老の男性。医療法人のM&A(合併・買収)を手がける「経営コンサルタント」を名乗っていた。紹介を受けた翌日、千代田区のオフィスを訪ねてきた男性はこう切り出した。
「財務省が所有する新宿区の土地がある」
話題に上がったのは、新宿区百人町にある国家公務員宿舎のことだった。
男性によれば、付近にキャンパスを構える私立大学が近く宿舎が建つ土地を取得する予定で、一定額の手数料を支払えば、その大学から土地を優先的に購入する権利を得られるという。男性は「財務省に顔が利く元キャリア官僚」が取引を仲介し、手数料はその元官僚に支払われるとも付け加えた。会社社長は28年5月にも、同様の投資話への出資の誘いを受けていた。