クローズアップ科学

「神岡から3つ目のノーベル賞を」東大宇宙線研究所長・梶田隆章氏 ハイパーカミオカンデに懸ける夢

陽子崩壊を初観測

ハイパーカミオカンデが狙うより大きな成果は、世界初となる「陽子崩壊」の観測だ。

陽子は中性子や電子とともに原子を構成する要素の一つで、クォーク3個でできている。現在の素粒子物理学の基本法則を超える「大統一理論」では、陽子はごくまれに崩壊し、別の素粒子に生まれ変わると予測されている。観測できればノーベル賞級の成果だ。

陽子の平均寿命は現在の宇宙の年齢をはるかに超えて、少なくとも10の34乗年という途方もない長さだ。だが、ハイパーカミオカンデには大量の水があるため、水の分子に含まれる陽子のどれか一つでも崩壊すれば、その際に生じた素粒子によるチェレンコフ光をとらえることができる。

大統一理論は、自然界に存在する4つの力のうち、重力を除く3つをまとめる仮説だ。塩沢教授は「宇宙誕生直後は3つの力がまとまっていたとされる。大統一理論が仮説でなくなれば当時の姿に近づける大きな一歩だ。重力を加えた4つの力をまとめた全ての理論につながるかもしれない」と意義を強調する。(小野晋史)

ニュートリノ 物質を構成する最小単位である素粒子の一種。電気的に中性で他の物質とほとんど反応しないため観測が難しく、性質は謎が多い。1956年に発見された。3種類があり、電子の100万分の1以下の微小な質量を持つ。物質や宇宙の成り立ちを探る研究で重要な鍵を握る。名前はニュートラル(中性)の語尾に、小さいものを意味するイタリア語を組み合わせた「中性の微粒子」が由来。

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