クローズアップ科学

「神岡から3つ目のノーベル賞を」東大宇宙線研究所長・梶田隆章氏 ハイパーカミオカンデに懸ける夢

桁違いの観測量

宇宙は138億年前の誕生時に、物質を作る粒子と、電気的な性質などが反対の「反粒子」が同数生まれたとされる。だが現在は粒子だけが残り、反粒子は消滅した。「CP対称性の破れ」と呼ばれるこの現象の謎を解くことは、素粒子物理学の大きな課題だ。

この謎はノーベル賞を共同受賞した小林誠、益川敏英両氏の理論によって、素粒子クォークについては既に解明されている。しかし、両氏の理論だけでは、宇宙全体の物質を十分に説明できない。

ハイパーカミオカンデが目指すのは、この現象がニュートリノでも起きることを突き止め、謎の全容解明につなげることだ。スーパーカミオカンデの実験で既にその兆候が表れているが、確認にはより多くのデータが必要で、ハイパーカミオカンデでの検証が欠かせない。

計画では茨城県東海村の実験施設「J-PARC」で生成したニュートリノを、西へ295キロ離れたハイパーカミオカンデに向けて発射。地中を貫通し、光速で水槽に突入したニュートリノによって生じるチェレンコフ光をとらえる。

1日に観測できるニュートリノは、スーパーカミオカンデと比べ10倍の約300個に増える。同研究所の塩沢真人教授(素粒子物理学)は「観測量が桁違いなので、実験開始から数年で結論が出るかもしれない。この成果を踏まえ、さらに次の研究テーマが見えてくるのではないか」と意気込む。

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