29年10月、東京理科大葛飾キャンパスで行われたホンダの八郷隆弘社長の講演後、ある男子学生が「EVとFCVのどちらに注力したいのか」と八郷氏に質問。八郷氏は42年までに世界販売の3分の2をEVやFCVなどを含む電動車にする方針を説明後、「燃料電池のハードルも高いが、それはずっとやり続ける」と誓った。
世界で脱ガソリン車への動きが急進する中、インフラを含め「守備範囲」を広げなければ各国で異なる商機を取りこぼしかねない。それでもハードルが多い水素戦略が自動車産業を勝利へと導けるのか。その道筋は描き切れていない。
(経済本部 臼井慎太郎)
燃料電池車(FCV) 燃料の水素と酸素を反応させて発電しモーターで走行するエコカーで、電気自動車(EV)に比べ部品点数が多い。航続距離も長く、日産自動車のEV「リーフ」の約400キロに対して、ホンダの「クラリティフューエルセル」は約750キロ。燃料補給でもFCVが優位にあり、普通のエンジン車に近い感覚で短時間で水素を充填できる。ホンダは1980年代後半、トヨタ自動車は90年代前半にそれぞれ研究開発に着手。2017(平成29)年1月には両社や独自動車メーカーなどが水素利用の推進団体を設立した。ライバルが手を組んでFCVの巻き返しを狙う。