ただ、ここにきて官民協業で活路を見いだそうとする動きが出てきた。トヨタや石油元売り大手JXTGエネルギーなど計11社は30年春、FCVに燃料を供給する水素ステーションを整備する新会社を設立する計画だ。
政府は、水素技術を海外展開し世界の低炭素化をリードしようと、29年12月26日の関係閣僚会議で、水素基本戦略を決定した。経済産業省によると、自動車などでの水素利用を推進する方向を掲示。30年までにFCVを80万台とする従来目標を据え置くほか、バスを1200台普及させるなどと明記した。水素で走るトラックの商用化を目指す方針も盛り込んだ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本氏は「定時走行する燃料電池バスがカギを握る」とみる。バスで一定量の水素が消費されるようになれば、水素ステーション運営上の固定費が回収しやすくなるからだ。
トヨタは2020年東京五輪・パラリンピックに合わせ、水素の貯蔵タンクを10本搭載した燃料電池バスを東京都内を中心に100台導入する計画だ。
米カリフォルニア州では、家畜排せつ物などから水素を取り出し燃料電池で発電するメガワット規模の燃料電池発電所を20年に稼働。電力の一部をトヨタの物流拠点に供給するほか、水素を実証試験中の大型燃料電池トラックなどに使う計画も打ち出した。