経済インサイド

国内自動車大手がEVよりもFCV(燃料電池車)にこだわるワケ

 例えば、日照時間が長い夏に太陽光パネルで発電した電力の余剰分で、水を酸素と水素に電気分解。その水素をステーション内のタンクに運んで貯蔵し、必要なときにFCVや住宅用燃料電池に供給できる。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストも長くためられる水素の特長に注目し「再生エネの有効活用を促す選択肢はEVだけでは狭い」と指摘。地熱や雪解け水など各地域で消費しきれない再生エネの「受け皿」としてFCVなどを生かす可能性にも注目する。

 ただ、FCVの普及に向けたハードルは高い。クラリティフューエルセルの車両価格は700万円台。日産自動車のEV「リーフ」は最安グレードで半分以下の315万360円。いずれも国などの補助金を受けられるが、EVの方が手が届きやすい。

 多額のインフラ整備費もネックで、水素ステーションの1基当たりの建設コストは約5億円かかる。国内のステーション数は整備中を含め約100カ所。7000台以上あるEVの急速充電設備に比べ遅れている。

 インフラの少なさで各社の販売は伸び悩む。26年12月に世界に先駆けて量産FCV「ミライ」を発売したトヨタの場合、世界販売台数は29年10月末までの累計で約4600台(このうち国内約2000台)にとどまる。

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