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恥ずかしながら私は虫歯が多く、治療していない歯は無いといってもいいぐらいである。虫歯を抜いて、新しい歯が生えてきてくれたらどんなにいいだろうと真剣に思っている。
失われた体の一部が元に戻ることを「再生」という。生物の世界を見渡してみると「再生」という現象はそれほど特別なものではなく、おのおのの生物の生活にうまく組み込まれていることがわかる。例えば日本にいるヤマトヒメミミズという小さなミミズは、ある程度の大きさになると自分で体を10個ぐらいに切り離し、それぞれの断片から頭としっぽが再生することにより個体数を増やす。
この再生過程では「幹細胞」と呼ばれる未熟な細胞から必要な種類の細胞が作られ、それらの細胞がコミュニケーションを取りながらうまく組み上げられることにより、失われた部分が作り直される。この幹細胞は私たちの体の中にもあり、寿命で失われる細胞を補ったり、傷を負った組織を修復したりしている。しかしながら、幹細胞があるにもかかわらず、ヒトではごく限られた器官しか再生することができない。一体なぜなのだろうか?
私はヒトでみられる再生メカニズムの本質を明らかにすることにより、この疑問に迫れるのではないか、さらには他の器官を再生させるヒントが得られるのではないかと考えている。これまでの研究から、哺乳類で再生できる数少ない器官である毛包(もうほう=毛を作り出す器官)と指先の再生には、「Wnt(ウィント)」と呼ばれるシグナルの活性化が重要であることが分かってきた。さらには、マウスの指先ではこのWntシグナルを人為的に活性化させることにより、通常では再生の起こらない位置からでも再生を誘導できることが分かった。