正論・年頭に当たり

「平成」最後の1年を迎えて思う 国民に教えた「象徴天皇」の存在 評論家・山崎正和

 次の天皇、皇后両陛下はそのご経歴からみて、世界との接触、国際親善にいっそうのお力を注がれることが予想される。皇室はこれまで以上に外国人の視線を浴びることになるはずだが、そのなかでこの極端なご不自由はどんな評価を招くだろうか。三笠宮さまは、講義や出版という自己表現の機会を持たれ、庶民との社交ダンスさえ楽しまれたと聞くが、次代の天皇陛下、皇太子殿下にはせめてその幾分かの自由はお認めすべきだと思う。

 もっとも、こういうことは皇室の私的なお暮らしの問題だから、国民がそのいちいちに口を出すべきことがらではあるまい。もしこの改元を機会に政治家やマスコミが論ずべきことがあるとすれば、もっと本質的な問題だろう。

 いったい人間天皇には基本的な人権があるのかどうか。ないとすればその憲法上の根拠は何か、あるとすればその人権はどこまでの範囲で、どのような法的理由から制限できるのかという、法哲学的な問題である。(評論家・山崎正和 やまざきまさかず)

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