今後、国民の関心の的となるのは「上皇」となられた後のお振る舞い、そして新しい天皇陛下との役割分担のかたちだろう。だが、今となっては、この件に関しては新旧の両天皇陛下に全面的にお任せするしかないと思う。
戦後70年、「人間象徴」という至難の生き方を独力で模索し、威厳と親愛の絶妙の均衡を見いだしてこられたのは、皇室ご一族のほかにはないからである。国民としては今回の譲位のときと同じく、静かにそして最大限にそのご意向を受け入れるべきだろう。
それにつけて感じるのは、他の民主主義国家の王室と比べて、日本の皇室の格段に厳しい自己規制のお姿である。「君臨すれども統治せず」の原則は同じだが、欧州諸国の王族にははるかに大きい自由が許されている。英国の王室などは、皇太子に離婚と再婚の自由が認められたのである。
≪改元を機に本質的な論議を≫
一方、日本では天皇陛下ご自身の譲位のお望みを表明される際にすら、それが政治介入に触れることを恐れて、「お気持ちを滲ませる」お言葉を下されるしかなかった。これはあまりにも過酷な制約ではなかろうか。