続・消えるがん消えないがん

非喫煙者を侵す遺伝子変異 たばこと無縁「なぜ肺がんに」

 腺がんは、最新の研究で「EGFR」という遺伝子の変異が発病の引き金となっていることもわかってきた。驚くべきは喫煙の有無との関係だ。がん研究センターなどのデータによると、喫煙者の患者のうちEGFRの変異が認められたのは約30%だった。これに対し、非喫煙者の患者ではその倍の約60%だったのだ。腺がんの非喫煙者のリスクを見れば、「たばこを吸わないから肺がんにはならない」というのは早合点といえる。

 ただでさえ、肺がんの早期発見は難しい。がん研有明病院の西尾誠人医師は「肺の周辺には大きな血管や心臓などがあり、それらに隠れたりすると肺がんの影は検診のレントゲンには映らないこともある」という。コンピューター断層撮影(CT)検査でより詳しくチェックすることもできるが、早期発見につながるとはかぎらない。遺伝子の変異から引き起こされる腺がんはなおさらだ。

 では、腺がんの治療法はあるのだろうか。日本肺癌(がん)学会による診療ガイドラインでは、EGFR遺伝子の変異があると認められると、「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)など、がん細胞の増殖にかかわる特定の分子を狙いうちにする分子標的薬の服用が推奨される。新世代のEGFR阻害薬「タグリッソ」(一般名オシメルチニブ)も28年に保険適用となり、治療の選択肢が次第に広がっている。

 佐藤さんの腺がんは「切除不能または再発の非小細胞がん」と診断され、免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)の適用基準に該当した。2年間の投与で、転移したがんは明らかに小さくなってきた。副作用で高熱が出ることもあるが、今は、学生時代に所属していた合唱サークルの練習に参加するほど活力を戻している。

 「来月、千葉県内で開かれるベートーベンの『第九』のメンバーに選ばれたんです」と、生きる喜びをかみしめている。

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