理研が語る

薬の出前? ドラッグデリバリーシステム=薬を狙った場所にピンポイントで送り届ける技術 50年後の医療のために

 このように考える中で思い至ったのが、これまでの薬を服用する医療から、「私たちの体の中の必要な場所で、必要な時に、必要な量だけ薬を作る」医療への転換だ。ちなみに私たちの体は、必要な物質を必要な場所で、必要な時に、必要な量だけ作られるように設計されており、それが破綻することがつまり病気である。こうした医療を実現するために、病原性がない微生物の力を借りて身体の中で薬を作ってもらうシステムを考えている。これにはバイオテクノロジーの発展版である合成生物学や腸内細菌研究などの成果をうまく活用していくことになる。

 こうしたビジョンは、もちろん私一人で達成できるものではない。実現される日を夢見て、これからも研究室の仲間とともに日々の実験や議論を積み重ねていきたい。

 向井英史(むかい・ひでふみ) 理研ライフサイエンス技術基盤研究センター(CLST)分子ネットワーク制御イメージングユニットリーダー。京都大学大学院修了、博士(薬学)。修士課程は工学研究科で酵素模倣反応を研究していたが、博士課程で薬学研究科に移り、ドラッグデリバリーの研究を始める。理研ではPET(陽電子放射断層撮影)などのイメージング技術を活用した創薬研究にも従事している。趣味は中学生のときに始めたバイオリン。