四国の議論

サル山の「ボス争い」はどうやって起きるのか…なぜか重なる政権交代と人間の選挙イヤー

大分・高崎山の伝説のボス

 小豆島では例外だったが、マッチョのように離れオスがボスになるのが通例の地域もある。大分市の高崎山自然動物園だ。ここでは餌付けされている野生ニホンザルのオスは、厳しい社会構造を生き抜かなければならない。

 同園には現在B群(約700匹)、C群(約650匹)の2群があるが、14年まではA群もあった。

 2年から同園に勤め、観察を続けている藤田忠盛さん(47)の話は興味深い。同園では家系のいいオスが群れ内で昇格するのではなく、離れオスが大人になって群れに入る加入順で昇格するのがもっぱらだという。強さが基準ではなく、銚子渓とは少し事情が違う。

 ただここでも例外はある。B群に加入して4年後の昭和62年、わずか9歳(同園で最年少)でトップの座に就いた「ベンツ」がそうだ。通常のコースをたどってボスになったベンツだが、この後が異例だった。平成2年、12歳でボスの座を捨てメスの後を追うように群れを出てC群に入ったのだ。

 新入りの離れオスの地位は最下位。かつてB群のボスだった栄光は何の役にも立たない。ところが、闘争心旺盛で人情も厚く、群れ内に何かあると駆けつけるベンツは、徐々に存在感を増していく。A群と抗争を繰り返し、ついにA群を餌場から追い出して消滅するきっかけをつくり、若いサルから信頼や支持を得た。

 そして22年、ついにC群のボスの座に就いた。B群を出てから約20年、33歳の時で、2つの群れでボスに昇りつめた特異な例として今も語り継がれている。

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