黒や茶の毛が混ざり合うサビ柄。捨て猫と思われた。「置いてあげて」と懇願するお客たち。店の前には猫小屋がプレゼントされて…。最初は戸惑ったマスターも次第に情がわいてくる。人の気持ちを察して不安になったり喜んだり、励ましたりもする、猫のしぐさや表情がいじらしい。
「ポンは描かれている通りの猫でした」と、マスターの宮田さんは漫画に太鼓判を押した。「店の前に集まる人たちに愛されていることを自覚し、みんなの猫であろうとし続けた。『寒いから店に入れ』と言っても、顔をちょっと入れるだけ。どこへも行かず、狭いテリトリーから決して離れようとはしなかった」
編集者の滝広さんは勤務先が近く、常連の1人だった。「お客さんの顔を覚えて、ニャーンと甘える接客上手。しゃがむと膝に乗ってくる。人の少ない雨の日は、誰か話しかけてくれないかな〜って風情で、往来を見つめていました」