日本は今後、世界でも例をみない未曽有の超高齢社会への対応を迫られる。団塊世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、医療費や介護費の増大が懸念される「2025年問題」だ。平成37年には、全人口の6人に1人が75歳以上となり、政府の試算では医療費は24年度の1・54倍、介護費は2・34倍に膨らむ。
さらに15〜64歳の生産年齢人口が62年には現状から3割減るとの推計もあり、このままでは日本経済の先細りは避けられない。政権には、働き手の減少を一人一人の能力を引き上げることによって補うという青写真がある。
30年度予算案は、北朝鮮問題への対応も強化した。ミサイル防衛態勢の強化に向け、イージス・アショアの基本設計費などを盛り込み、戦後最大の安全保障上の危機に対する備えに万全を期す構えだ。
もちろん、今回の予算案は手放しで評価できるわけではない。医師の人件費などに当たる診療報酬本体部分のプラス改定は、選挙で自民党を支えた医師会への見返りとの見方もある。だが、既に高額な医師の報酬をさらに優遇することへの納得感は乏しい。厳しい財政事情を考慮すれば、痛みを伴う改革は不可避だ。
国力を維持するためにも国難に挑む諸施策は今後も断行し続ける必要がある。(今井裕治)