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泉北高速泉ケ丘駅(堺市南区)を降りると、濃厚なチーズの香りが漂う。駅前のパン店「泉ケ丘グーテ」(旧・エーワンベーカリー)で、チーズパン「ブロッチェンチーズ」が山積みになっていた。店長の岸本良平さん(37)が「古くからのうちの看板商品なんです」という。
とりわけよく売れるのが、お盆と正月。ニュータウンを巣立ち、帰省してきた子供たちに食べさせようと、まとめ買いをする高齢者が多いのだという。
東京で泉北会
NHK連続テレビ小説「てっぱん」などを手がけた東京在住の脚本家、今井雅子さん(47)もこのパンを食べて育った。「あまりにいいにおいで、店を出てすぐ、その場で食べようとして、よく親に怒られましたね」と振り返る。
今井さんは、東京在住の泉北出身者ら60人を超える仲間と「東京泉北会」と名付けた地元会を開催している。あるとき、会合にこのパンが持ち込まれたときは、参加者たちが感激。パンを手に持って掲げ、歓声をあげる人もいたという。
「チーズがすごく濃くて、こんなパンはなかなかない。だからこそ、懐かしく感じるんでしょうね」と今井さん。「『ふるさとの味』といえば、郷土料理を思い起こすのが普通なんですけどね」と笑った。ニュータウンのふるさとの味はチーズパンなのだ。