正論

地政学変えるエルサレム「首都」 この重さを知らないのはトランプ氏自身かもしれない フジテレビ特任顧問・明治大学特任教授・山内昌之

 2017年は、パレスチナにユダヤ人の民族的郷土の建設を認めたバルフォア宣言から100年に当たり、国連パレスチナ分割決議から70年を経た節目の年だからである。加えて、東エルサレムやヨルダン川西岸をイスラエル軍に占領された第3次中東戦争から50年でもあった。

 この1世紀来、アラブの政治エリートをいただく民衆はなすところもなく敗退と屈辱を重ねてきた。その挫折感は、アフガニスタン、イラク、リビア、イエメンなどでの戦争、アラブの春の頓挫、シリア内戦と大量難民の発生、テロの広域的蔓延(まんえん)によって後景に退いていたパレスチナ問題を、再び中東政治と国際外交の焦点として前面に押し出す要因となる。

《利益を受けるロシアとイラン》

 トランプ氏の不注意な決定は、中東地政学に変動をもたらすだろう。最大の利益を受けるのはロシアとイランである。シリア内戦で「イスラム国」に打撃を与えアサド政権を蘇生させたロシアは米国に対抗できる大国としてアラブ人とムスリムによって認知され、アラブの春を間接的に窒息させた責任は問われずに済むはずだ。

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