だからこそ、歴代の米大統領は、67年の第3次中東戦争でイスラエルが占領した東エルサレムの扱いに慎重であり、イスラエルとの同盟を維持しながらアラブとの親交を深めるという二重外交を続けられたのである。
《再びパレスチナ問題が前面に》
エルサレムはユダヤ教徒だけでなく、キリスト教徒やイスラム教徒にとっても1000年以上の由緒をもつ重要な聖地である。しかし、トランプ氏がプロテスタントの長老派信者なのに、いともたやすくエルサレムをイスラエルの首都に公式認定したのは、彼のなかにある「クリスチャン・シオニズム」の思想のせいであろう。
これは、神がユダヤ人にイスラエルという土地を与えたと認める立場であり、ユダヤ人の民族的郷土への帰還運動つまりシオニズムをキリスト教の内部から補強する考えでもある。今回の宣言と公館移転の意思表示は、フリードマン駐イスラエル大使とクシュナー上級顧問(イバンカ氏の夫)の影響によるものだろう。
しかし、その発表のタイミングはイスラエルのネタニヤフ首相とトランプ氏にとっては絶妙だったかもしれないが、パレスチナ自治政府のアッバス議長やヨルダンのアブドラ国王らにとっては屈辱的な時機以外の何物でもなかった。