理研が語る

行き先が見えない生物学の研究の旅、だからこそワクワクする さて今日もまたどこへ行く?

 ところが違う目的で実験をしているときに、センサー分子の居場所がおかしくなっていることに気づいた。センサー分子は細胞表面で働くが、私たちが見つけたタンパク質はその一部を細胞内にしまっておいて、必要な時に細胞表面に送り届けているらしかった。このおかげで、細胞はcAMP濃度が高くなっても正確にその発生源が分かるらしい。

 当初はこんな結論を全く予想していなかった。寄り道をたくさんした末に、ようやくたどり着いたのだ。私の研究も細胞性粘菌のように、まっすぐ目的地に向かって効率よく進むことができたら、と考える時もある。しかし、きっと明日も思ってもいない結果に頭を悩ませるのだろう。でも、行き先が分からないぶんワクワクする。だからこそ、この仕事が続けられるのかもしれない。

 上村陽一郎(かみむら・よういちろう) 理研生命システム研究センター(QBiC)細胞シグナル動態研究グループ上級研究員。国立遺伝学研究所助手、米国ジョンズホプキンス大学研究員を経て現職。遺伝学研究所までは、出芽酵母を使って染色体DNAの複製を研究。その後、現在のテーマである細胞性粘菌を用いた走化性の研究を開始。走化性を含めたさまざまな生命現象にどんな生体分子がどのように機能するのか興味を持っている。