竹島を考える

「サンフランシスコ慰安婦像」許した政府、国会の無策…地方任せでなく国が「外交戦」を 

米サンフランシスコ市にある慰安婦像。姉妹都市の大阪市が設置に反対してきたが、こうした問題では国が「外交戦」をとるべきだろう
米サンフランシスコ市にある慰安婦像。姉妹都市の大阪市が設置に反対してきたが、こうした問題では国が「外交戦」をとるべきだろう

北朝鮮からとみられる木造船が東北地方などの日本海沿岸に相次いで漂着している。食糧難に喘(あえ)ぐ北朝鮮当局が「冬季漁獲戦闘」を奨励しているからという。北海道松前町の無人島に接岸した木造船からは島にあった発電機などが見つかり、道警が窃盗容疑で自称北朝鮮国籍の船長ら乗員3人を逮捕する事態に。船からはテレビなどの家電も見つかっている。そこで思い出したのが、新羅(しらぎ)の海賊である。新羅時代末期(9〜10世紀ごろ)、対馬島や九州北部が新羅の海賊に襲われる事件が起きていた。

毅然とした態度取らず国威損ねてきた日本

竹島問題の発端にも、これと似た出来事があった。江戸時代、鳥取藩米子の大谷家が幕府の許可を得て欝(うつ)陵(りょう)島に渡っていたが、1693年、漁撈(ぎょろう)活動のため渡海すると、島に残しておいた小舟や道具類を朝鮮の漁民が無断で使っていた。そこで大谷家の船頭らは、越境侵犯の生き証人として漁民の安龍福(アン・ヨンボク)ら2人を連れ帰り、鳥取藩に訴え出た。これが、竹島問題の始まりである。

北朝鮮の漁船が日本の排他的経済水域内で違法漁撈を行うのも、新羅の海賊が王命で対馬島を襲ったのも、竹島を侵奪した韓国と同様、国家的犯罪行為である。

だが、いずれの事例でも日本側は毅然とした態度をとらず、国威を損ねてきた。それは、拉致問題や尖閣諸島問題、北方領土問題とも共通する。そこで近年、日本政府も海外広報に関心を持ち、海外での広報活動をすることにしたのだという。

慰安婦問題も「歴史戦」から「外交戦」に

しかし、その種の活動は、問題が発生した時点ですべきことである。初期消火を怠って大火事になってからでは、鎮火にも手間がかかる。

慰安婦問題がその例である。日本の兵隊相手に商売をし、強制性はなかったとされるが、今では、「河野談話」(平成5年に出された「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」)を言質にとり、日本政府に謝罪と反省を促すための慰安婦像が世界各地に建てられている。これは「歴史戦」を超えて「外交戦」の域にある。

それも今回、米・サンフランシスコ市に建てられた慰安婦像は、中国系米国人の団体によるものという。中国との間には尖閣問題が燻(くすぶ)っている。慰安婦問題を歴史問題とすることで、日本を牽制する意味もあるのであろう。これに対して姉妹都市の大阪市では、市長自ら姉妹関係を解消することにした。

日本の外交システムが抱える欠陥

だが、一地方自治体の首長がなぜ、外交事案で苦渋の選択をしなければならないのか。これは、「竹島の日」条例を制定せざるを得なかった島根県と似ている。

竹島問題を棚上げして結んだ「日韓漁業協定」では、日本の排他的経済水域内に日韓の共同管理水域が設定され、韓国漁船による違法漁撈が深刻となっていた。そこで、島根県議会が竹島の「領土権確立」を求めて成立させたのが、「竹島の日」条例である。日本政府はこれに反対し、外務省高官が「実効的には何の意味も無いことだ」と牽制した。

しかし、「実効的に何の意味もない」外交をしていたのは、日本政府である。そのため地方自治体や個人、団体が外交事案に関与せざるを得ないのだ。この現状は、日本の外交システムに欠陥があるということである。

日本と中韓露の「歴史戦」の間隙衝いた北朝鮮

これまでも何度か紹介したが、韓国政府は「竹島の日」条例が成立しそうな状況を察知すると即座に、竹島問題を持続的に研究し、政策提言のできる機関の設置を決め、「歴史戦」を挑んできた。

中国とロシアも、韓国が国策研究機関の活動を始めると、その「歴史戦」に参戦した。中国は尖閣問題を浮上させ、ロシアは北方領土問題を第二次世界大戦の結果だとして、日本政府に揺さぶりをかけてきた。

その間隙を衝き、核開発やミサイル開発に拍車をかけたのが北朝鮮である。

日本政府は、北朝鮮に対する経済制裁で前のめりの状態にあるが、北朝鮮問題の解決は日米だけでは難しい。周辺諸国を巻き込み、協力体制を整えていく必要がある。

現状の北朝鮮は、宮中と府中の区別のなかった19世紀後半の朝鮮半島とも近いからだ。その北朝鮮にいたずらに軍事的圧力を加え、経済制裁で臨めば頑(かたく)なになるだけである。

圧力、制裁の前に処理しておくべき外交課題

これは、軍事的圧力や経済制裁の前に、処理しておくべき外交課題があるということだ。それは竹島問題と尖閣問題に目処(めど)をつけることである。尖閣問題は民主党政権時代の失策で中国側に付け入る隙を作り、政権を取った自民党政府は、尖閣問題が「日米安全保障条約第5条の適用範囲内か否か」に汲々(きゅうきゅう)として、改憲を急いできた。