正論

慰安婦像めぐる姉妹都市の解消は相手の思うツボか したたかにパワーゲーム戦え 同志社大学教授・村田晃嗣

 次に地方自治である。6月にアメリカのトランプ大統領が地球温暖化防止に関するパリ協定からの離脱を表明すると、全米で14の州と100を超える市がパリ協定継続を表明した。アメリカの地方分権の底力を見た思いがする。

 だが、地方自治が外交に悪影響を与えることもある。サンフランシスコ市議会は、慰安婦像の寄贈受け入れを全会一致で決め、エドウィン・リー市長も拒否権を発動しなかった。これを受けて、同市と60年にわたって姉妹都市関係にある大阪市の吉村洋文市長は、11月に姉妹都市関係の解消を表明した。

 東アジアで日本や中国、ロシア、韓国、北朝鮮などが熾烈(しれつ)なパワーゲームを戦っているように、アメリカという開かれた市民社会でも、さまざまなエスニック・グループや人権団体がイメージをめぐるパワーゲームを展開している。そこにはしたたかな戦略と戦術が必要である。

≪毅然とした態度は「短慮」にも≫

 日本人には、この認識が乏しいのではないか。「性奴隷」などの過激な表現や事実誤認には、冷静に反論すればいい。だが、この「ゲーム」の資源はイメージなのである。しかも、全米で中国系、韓国系市民の人口が増える中で日系アメリカ人の人口は減少の一途であり、そもそも日本に不利な「ゲーム」の構造になっている。

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