赤の広場で

出馬宣言したプーチン大統領の「ぎこちない」笑顔

 まさか、と思った。6日のプーチン大統領の出馬宣言。ロシアでは12月中旬以降に政治関連の行事が続くため、そのいずれかで発表されると見込まれていた。原稿の締め切り間際の時間帯。幸い、いつ発表されても対応できるよう準備はしていたが、さもなければ顔色が真っ青か真っ赤になっていたと思う。

 ただ、宣言は想像よりずっとインパクトに欠けたものだった。旧ソ連時代から続く国産自動車工場での労働者との集会。出馬を促す司会者の言葉に、どこかぎこちない笑顔で出馬宣言するプーチン氏。「労働者」と「国内産業」を重視する姿勢を印象付ける狙いとみられるが、対米非難などを行う際の同氏の独特の雄弁さは感じられず、セリフを棒読みしているような印象すらあった。

 翌日、露メディアは出馬宣言をめぐり「冬季五輪への出場禁止と重なり、失敗だった」「プーチン氏が思いつきで発表を決めた」などとさまざまな分析を紹介したが、いずれにせよ国内の高揚感は薄い。

 プーチン氏の言動は演劇のように周到に準備されている印象がある。ただ20年近く国のトップに君臨し、国際社会からも孤立するなか、国民を盛り上げることは容易ではない。あのぎこちない表情が、同氏の苦労を物語っていると勝手に思った。(黒川信雄)

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