■学生と社会人交流促す 首都圏・関西からプロ招集
来春開学の長野県立大学(長野市)に設置される「ソーシャル・イノベーション創出センター」の事業構想が固まった。少子高齢化や人口減少、子供の貧困など地域が直面する課題に、「ソーシャル・イノベーション」(社会変革)を起こし、解決への道筋をつける中核施設とする。理事長に就任予定の安藤国威・元ソニー社長は「既存の大学にはないユニークな機能を発揮したい」と意気込んでいる。
ソーシャル・イノベーションは、社会が直面する課題に対する革新的な解決手法として注目される。社会環境が急速に変化し、従来の課題解決法が有効でなくなりつつある中、行政だけでなく企業やNPO法人、大学などさまざまな主体が連携することで、新しい持続可能社会を築き上げる手法をいう。
同センターは、後町キャンパス内に開設。実際に地域で展開されているソーシャル・イノベーションの事例を学生に提示したり、社会人を学内に招いたりする一方、学生を企業に派遣し「知と実践の循環」を目指す。
具体的には、持続可能なビジネスの立ち上げを支援する事業者や創業者を対象とするコンサルティングや、社会人塾生を受け入れて新しい視座から学ぶプログラムの開講、後継者難に悩む経営者とともにビジネスモデルの創出を図る「家業イノベーション塾」、長期インターンシッププログラムの開発などを計画している。
センター長に就任する大室悦賀(のぶよし)・京都産業大教授は、県立大グローバルマネジメント学部グローバルマネジメント学科企(起)業家コース長も兼ねる予定。「東京圏や関西圏からさまざまなプロフェッショナルを長野に集め、県内の企業を支える」としている。
連携先として、創業や経営支援のノウハウを持つ八十二銀行(長野市)や、多様な人材受け入れ施設を来春開設する塩尻市、広大な中山間地に多くの課題を抱える長野市などとの連携が決まっている。
阿部守一知事は、同センターの効果を県内全域に行き渡らせることを期待した上で、「県立大から新しい動きをつくり、地域社会の発展に大きな一石を投じる。その一歩となることを願う」と話している。(太田浩信)