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なじみの遊女、松山を恋い慕うあまり、気がふれてしまった大坂の若旦那、椀屋久兵衛(わんやきゅうべえ)。
≪ひとり焦るるひとりごと 恋しき人に逢わせてみや…≫
仁左衛門は、恋しい人の面影を追い求めてさまよう男の姿を優婉に踊る。
12月1日から始まった京都の顔見世。「二人椀久(ににんわんきゅう)」は昭和60年、坂東玉三郎と初めて踊って以来の当たり役。今回は、長男の片岡孝太郎と、美男美女の悲しい恋を表現する。「椀久と松山の世界を、その風情を大切に、幻想的に表現したいですね」
そもそも本曲は戦後、初代尾上菊之丞が振り付けたバージョンが長く上演されていた。それを、仁左衛門と玉三郎が「また違う『椀久』を作りたい」と、二代目花柳錦之輔(はなやぎきんのすけ)の振り付けで作り上げたのが今作。
すらりとした姿態、端正な容貌の仁左衛門にぴったりの舞踊である。
「恋のために気がふれる男性ねえ。私は経験がないけど、俳優というのはあくまでも想像の世界で演じるものですからねえ」
椀久の登場の場面では毎回、女性客の感嘆の吐息が場内に広がる。
上方歌舞伎の再興に尽力した父、十三代目仁左衛門の名跡を十五代目として襲名して来年で20年になる。