浪速風

オリンピックで重要なことは…

「オリンピックで重要なことは、勝つことではなく、参加することである」。近代オリンピックの創始者、クーベルタンの言葉として有名だが、実は英米の対立から険悪なムードだった1908年のロンドン大会で、セントポール大聖堂の礼拝に集まった選手たちに主教が語った。

▶だが、いつしか勝つことが重要になり、オリンピックを国威発揚の場と考える国は不正に手を染める。国家主導のドーピングは今に始まったことではない。IOC(国際オリンピック委員会)は平昌(ピョンチャン)冬季五輪からロシア選手団を除外することを決めた。潔白が証明された選手は個人参加を認める。

▶64年の東京大会の開会式を、作家の石川達三はこう書いた。「涙を禁じ得なかったのは、たった一人の選手が、その国の旗をかざして入場してくる姿だった。彼等においてこそ本当に、〈参加すること〉に意義があったに違いない」。国旗のない孤独な行進は、オリンピックの原点回帰への一歩だ。