被災地を歩く

現状をSNSで中東へ発信 投稿に高い関心 交流深める

 その中のひとつ、生産法人「GRA」が管理する「イチゴワールド」では、ハウス内の温度や湿度、二酸化炭素量などの管理に、ICTが活用されている。生産者間でデータを収集・共有し、必要なデータを全て公開。橋元洋平副社長(40)は「農業はこれまで経験や勘によるところが大きかったが、それでは次世代に引き継げない。大規模化にはIT化が欠かせなかった」と話す。

 ソフトウエア開発に携わるエンジニアのマゼン・ルカイニさん(28)は設備を見た上で、「サウジは土地も資金も潤沢にある。(中東地域では)特にヨルダン西岸部が宮城と気温も似ていて、イチゴ生産には最も適した土地だと思う」と話す。その上で、「ここのシステムをそのまま転用することも可能」といい、宮城からサウジへの技術輸出も見込めるという。

 橋元副社長は「日本だけでなくインドでもイチゴの生産ができている。これからもいろんな地域で生産できれば」と期待を寄せた。

イベントで交流も

 「震災後、ツイッターで災害の被害の様子を写真や動画で伝えるユーザーが増え、行政でもSNSを確認する部署ができました」

 午後には石巻市の「IRORI」に場所を移した。津波で被災したガレージを改装したカフェで開かれた意見交換会には、河北新報の古関良行・石巻総局長(51)が参加。震災前後の報道のあり方や、SNS活用の現状を話した。

 一般社団法人「イトナブ」の加藤奨人さん(25)は、小中学校でのIT教育などの活動を通じて、ソフトウエア開発やデザインを学ぶ機会を提供。石巻から千人のIT技術者を輩出することを目指して活動している。ルカイニさんとはこの日、サウジと石巻でチームを組み、プログラミングのイベントを行う約束を取り付けた。

 3人はこの日、スマートフォンを手にSNSでライブ配信、写真投稿を続けた。「こんなにコメントがついているよ」。コメント欄を見ると、中東のフォロワーから1つの投稿に数百単位の反応があり、関心の高さを物語っていた。

 親日家の団体で代表を務めるアートディレクターのシャーザ・アルドゥースさん(30)は「単なる復興というより、人が喜ぶ新たなサービスを行っていることに感銘を受けた」。

 ネット媒体で30万人の閲覧者を抱えるマガジン社の編集長、ワリド・アルタイラさん(35)は「6年という短い期間での復興の早さに驚いた」と話した。(千葉元、写真も)

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