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白菜 鍋料理の定番、寒さで増す甘み

【フード 食】旬 白菜 鍋料理の定番、寒さで増す甘み
【フード 食】旬 白菜 鍋料理の定番、寒さで増す甘み
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寒さが厳しくなると甘みがぐんと増す白菜。鍋料理はもちろん、シチューや炒め物、漬物、サラダなどさまざまな料理で楽しめる万能野菜だ。一年中店頭に並ぶが、旬は11月から3月にかけて。生産量全国一を誇る生産地、茨城県を訪ねた。(平沢裕子)

1株ずつ手作業で

関東平野が広がる同県西部の結城市は、秋冬(しゅうとう)白菜の産地。11月下旬、JA北つくば秋冬白菜部長の浜野公男さん(52)の畑では、ベトナムの農業技能実習生と浜野さんの家族ら十数人が、白菜の収穫と箱詰め作業に追われていた。

白菜の根元を切り取る収穫は、刃先が外側にカーブした専用包丁を使い、全て手作業で行われる。白菜は根元周りの底部分が丸く盛り上がっており、底の葉を傷つけずに根元を切るのは、機械ではできない。「キャベツの収穫は機械化できたが、白菜はまだ無理。当分は難しいでしょうね」と浜野さん。午前8時ごろから日が暮れるまで行われる作業は、旬が終わる3月ごろまで、ほぼ毎日続けられるという。

糖度高め凍害防ぐ

白菜は、アブラナ科の植物で、キャベツやカブと同じ仲間。原産地は中国で、日本へは明治時代に政府が導入した。日清・日露戦争時、現地で白菜の味に慣れた兵隊が帰国して普及が進み、昭和初期には全国に定着したとされる。

高級絹織物「結城紬(つむぎ)」で知られる同市で白菜栽培が盛んになったのは、昭和60年ごろから。主要産業だった養蚕業が衰退、代わりに野菜作りが推奨されるなどしたためだ。

JA北つくばでは現在、134軒の生産者がオリジナルのブランド白菜「菜黄味(なおみ)」を栽培。営農販売課の相沢真之さんは「菜黄味は、柔らかくて、芯の部分が黄色く甘いのが特長。寒さで甘みが増すこれからの季節は、鍋料理で旬ならではのおいしさを味わってほしい」と話す。

農業・食品産業技術総合研究機構によると、寒さで白菜が甘くなるのは、細胞の糖濃度を高めることで、寒さによる害(凍害)を防ぐ効果があるためという。白菜自身が自分の身を守ろうとした結果なのだ。

ピェンローは大勢で

白菜をたくさんおいしく食べられる鍋といえば、豚肉や春雨と煮込む「ピェンロー(扁炉)」がある。舞台芸術家の妹尾河童(せのお・かっぱ)さんが著書「河童のスケッチブック」(平成7年刊)で紹介し、広く知られるようになったようだ。同書によると、この鍋は中国広西省の田舎料理。最近は鍋といっても1〜2人で食べることも多いが、妹尾さんは「ピェンローは二人で静かに食べる鍋ではない。数人で陽気に…」と大勢で食べることを勧めている。

また、「間違ってもネギや人参(にんじん)、春菊などを加えないこと」とも。その理由として「この鍋は、白菜と塩と胡麻(ごま)油の美味(おい)しさを再確認することに尽きる料理だと思う」と記している。

妹尾さんが描いたピェンローの絵の横には「冬の鍋はピェンローが一番!(ただし、うんと寒くなって白菜がウマクなるまで、待つこと)」と、食べる時期も限定する念の入れようだ。今は、まさにピェンローの食べ頃。家族や友人とともに、今夜はピェンローを囲んではどうだろう。

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