理研が語る

原理的部分の説明重視「物理学」に対し意外性重視!? 理論未整備「生命科学」の理論をつくる

【理研が語る】原理的部分の説明重視「物理学」に対し意外性重視!? 理論未整備「生命科学」の理論をつくる
【理研が語る】原理的部分の説明重視「物理学」に対し意外性重視!? 理論未整備「生命科学」の理論をつくる
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 近年、「科学とは何か?」という問いに思いふけることがよくある。「物質科学」と「生命科学」、分野は違えど同じ科学だという認識が一般的である。対象、原理、道具、学問的な進度など、知識の詳細に違いはあっても、科学としての基本的な考え方やアプローチにそんなに違いはないはずだ。むしろ、共通する「科学的な思考」があるからこそ「科学」として成り立ち、分野が違っても同じ視点で見ることが可能になる。

 しかし、驚くことに「物質科学」と「生命科学」は正反対の性格を帯びており、しかもその違いは「文化」の違いとして形容されることが多い。

 例えば、プレゼンテーションの仕方が違ったりする。研究の中心をなす原理的な部分の説明を重視する物理学に対して、生物学の場合は研究結果の新規性や意外性を重視しているように感じられる。他にもいろいろあるが、両者の決定的な違いは「理論」の有無だと思う。

 物理学の場合だと、「ガリレオの落体の法則」や「アインシュタインの相対性理論」といった法則や理論がたくさんあり、物理学の教科書も大抵は理論の説明から始まる。しかし、生物学の法則や理論を学ぶことはほとんどない。実例がたくさん並べてあり、それらの知識に通じる理論は整備されていない。

 ここ半世紀の生命科学の発展には目覚ましいものがあり、実験を中心としたアプローチで、さまざまな遺伝子やタンパク質などが複雑なネットワークを形成して生命機能を制御していることが分かった。また、人工多能性幹細胞(iPS細胞)による新しい技術も実現されはじめて、われわれの生活にも大きな影響を与えようとしている。しかし、生命現象の「理解」という意味では、生命科学にはまだ解決すべき課題が数多く残されている。

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