「とてつもない数奇な運命の中で、本当につらいこと、苦しいことがたくさんあったと思います。どうかお元気で強くお過ごしいただきたいと祈っています」
インタビューの最中、40年前に北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの母、早紀江さん(81)から預かったメッセージを読み上げると、金賢姫元工作員のほおに涙がつたった。「本当にお母さんからメッセージが来たようで、とても涙が出ます」。涙が止まらず、うまく言葉にならない。
日韓両政府の協力で横田夫妻ら拉致被害者家族と面会したのは2010年7月、長野県軽井沢町でのことだった。めぐみさんとはほぼ同世代。初対面の早紀江さんは「めぐみちゃんを見ているようだ」と話した。
こうも語った。「金さんは苦難の道を歩いてこられたが、元気で生きている。めぐみちゃんも北朝鮮で元気で生きていて、きっと会える日がきます」。確信に満ちた母親の言葉。北朝鮮に残した自分の母と重なった。早紀江さんは、やさしく抱きしめてくれた。「お母さんみたいに…」