理研が語る

日本人ノーベル賞受賞並みに盛り上がった「高温超伝導」発見 あれから31年、フィーバーの再来を夢見て 

【理研が語る】日本人ノーベル賞受賞並みに盛り上がった「高温超伝導」発見 あれから31年、フィーバーの再来を夢見て 
【理研が語る】日本人ノーベル賞受賞並みに盛り上がった「高温超伝導」発見 あれから31年、フィーバーの再来を夢見て 
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 科学の話題が一般の新聞やテレビ番組で大々的に報道されることは、日本人のノーベル賞受賞が決まった時を除けばほとんどないように思う。私が覚えている唯一の例外は1980年代後半に起こった高温超伝導フィーバーの時である。電気抵抗が完全に消失する超伝導現象が、マイナス200度というこの現象としては「高温」で生じるとの発見は、リニアモーターカーやエネルギー損失のない送電線の実現につながるものと期待され、連日のようにニュースで取り上げられていた。

 私が大学院に進学した頃も、研究者の間では高温超伝導の研究は精力的に続いていたが、フィーバーと言う程の熱量は失われていたように思う。それは、実験的には超伝導が現れる「転移温度」がなかなか上昇しなかったことに加え、理論的にもその問題があまりに難しかったためであろう。高温超伝導は、多数の電子がお互いを強く避けあう強相関電子系と呼ばれる舞台で現れる。この系は紙と鉛筆で解くことがほぼ不可能であり、コンピューターを使っても一筋縄ではいかない。特に超伝導はこの舞台の一番難しい所に現れる。

 私自身はその難しさにも魅力を感じて強相関電子系を研究しており、そこでは超伝導以外にもたくさんの面白い現象があることを実感している。しかし、高温超伝導そのものに手を出すのには躊躇を感じていた。

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