JASRACはなぜ洋画の音楽使用料を値上げしたいのか 映画音楽に何が起きた?

 この18万円が興収の何%に当たるかを、記憶に新しい大ヒット米アニメ映画「アナと雪の女王」(2014年)で計算すると、「アナ雪」の日本での興収の総額は約255億円で音楽使用料は日本中で合わせて定額18万円だから、興収の0・0007%。2%前後の欧州の水準とは大きく異なる、というわけだ。

 「音楽は俳優に劣らないぐらい重要な役割を担っている。努力に見合う対価や適正な報酬が(作曲家、作詞家に)支払われなければならない」と話すJASRACは、1作品18万円の「定額制」を欧州同様、興収の1〜2%程度の「従量制」に改める目標に掲げ、「関係団体と交渉する」としている。

 年度内に関係者団体から合意をとりつけ、文化庁への使用料規定の届け出を済ませ、来年度からは実施したい考えだ。

東京宣言

 JASRACは、なぜ、このタイミングで洋画の音楽使用料値上げの口火を切ったのか。

 JASRACの会見と同日、東京では「国際音楽創作者評議会」(CIAM)の総会が開かれた。

 世界中の著作権者で作るCIAMの総会がアジア・太平洋地域で開かれたのは、これが初めだったが、この総会後、CIAMとアジア・太平洋地域の著作権者で作る「アジア・太平洋地域音楽創作者連盟」(APMA)が共同で記者会見、APMAが「東京宣言」を発表した。

 この宣言は「アジア・太平洋の多くの国、地域においては、映画音楽の創作者に適正な対価還元がなされていない」と現状を憂えて、「映画の成功を音楽創作者も共に喜ぶにふさわしい上映使用料の還元がなされるべきである」と訴えるもので、実際、中国、タイ、インドなどでは映画の上映から音楽使用料を、まったく徴収できていないのだという。

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