広角レンズ

いまやフォント(書体)を味わう時代…理想を求めて写植が残す本への思い

 サイト開設のきっかけは、慣れ親しんできた雑誌の書体がある時期に姿を消してしまったこと。調べると、それらはパソコンで版下作成を行うDTP(デスクトップパブリッシング)のデジタル書体に代わられ、使われなくなった写植(写真植字)の書体だった。「活字を使うのは出版・印刷業界の専門家だと思われているが、本を読むのはまさに文字を使うこと。読者の立場から、知的資産としての書体の評価を発信していきたい」と語る。

 担当編集者の金子哲郎さん(49)は「メールやSNSなどで、今ほど文字に触れる時間が多い時代はない。ちょっと変わった字を使いたいと思う人たちを対象とした本が出ても当然」と分析する。コミックマーケット(コミケ)で売るリトルプレスに、あえて写植書体を使いたいという人も増えているという。

 11月に刊行された正木さんの新著『文字と楽園』(同)は、「精興社書体」と呼ばれる独自の明朝体で読む現代文学がテーマ。文字と言葉がおりなす味わいを語り、書体によって作られる文学の系譜を語る意欲作だ。

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