広角レンズ

いまやフォント(書体)を味わう時代…理想を求めて写植が残す本への思い

 鳥海さんが手がけるのは、「本文書体」という小説の文章や新聞記事に使われる3ミリくらいの小さな文字。その理想は、「水のような、空気のような」と例えられる。「本文書体は活字のデザインの幹のようなもの。文章を読んでもらうための文字であって、個性を主張するものではない」

 漫画のエピソードのようなことも実際にあり、舞城王太郎さんの作品のために「濁流を流れる流木」のイメージで、仮名文字を作ったことがある。また、組み版会社の依頼で、近代文学向け、女流文学向けなどの仮名書体も制作した。「パソコンで書体を選ぶ経験も日常的になっている。しかし、それとは一線を画す『ハレ』の場面の書体の重要性を知ってもらえれば」

コミケでも…

 「この3、4年で文字の本がすごく増えた」と話すのは、文筆家の正木香子さん(36)。

 正木さんは、子供の頃から書物で親しんできたさまざまな書体の印象を、食べ物にたとえて語るサイトを平成23年に開設。25年に『文字の食卓』(本の雑誌社)として書籍化した。

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