浪速風

ふかくこの生を愛すべし-座間事件の背景に被害者らの「自殺願望」 会津八一の心得、教えられなかったか

白石隆浩容疑者が住んでいたアパート=神奈川県座間市
白石隆浩容疑者が住んでいたアパート=神奈川県座間市

歌人で書家、美術史家の会津八一(1881〜1956年)は「秋艸道人(しゅうそうどうじん)」と号し、故郷の新潟から上京した学生を受け入れた自宅に、人生の心得として「秋艸堂学規」を掲げた。「ふかくこの生を愛すべし/かへりみて己を知るべし/学芸を以て性を養ふべし/日々新面目あるべし」

▶弟子の吉野秀雄はある時、自殺を決意して訪ねてきた青年の前に、額に入れた学規を下げておいた。2時間ほど見つめていた青年は、非を悟って帰ったという。神奈川県座間市のアパートで9人の切断遺体が見つかった事件はまだ謎が多いが、胸が痛むのは、若い被害者たちの自殺願望が背景にあることだ。

▶10代後半から20代は、希望に満ちて豊かであると同時に、もろく傷つきやすい。現実逃避や厭世観にとらわれることもあるだろう。そこに白石隆浩容疑者が、蜘蛛の巣を張って待ち構えていた。「ふかくこの生を愛すべし」と教えてやれなかったか。21日は会津の命日である。