佐藤優の世界裏舞台

対テロの視点でも自殺志願者ケアが必要だ

〈「死にたい」のほかに、9月15日には「首吊(つ)り士」名のアカウントも開設した。「首吊り士」では「楽な自殺方法を教える」など、自殺知識の豊富さや頼りがいをアピール。相手とコンタクトを取る際には、性別や年齢を聞き出していた〉(7日付本紙)

白石容疑者が被害者を誘い出したこの手法をテロリストが用いれば、自殺志願者と接触することができる。

政府は白石容疑者がSNSを利用して被害者を言葉巧みに呼び出していたことを重視し、SNSの犯罪への悪用防止策を考えているとのことだが、これに加えインターネット空間におけるパトロールを強化する必要がある。各国の捜査機関、インテリジェンス機関との連携を強化してテロ組織が自殺志願者に接触する動きを調査し、対策を立てなければならない。

それに加え重要なのは、大学、専門学校、高校などの教育機関との連携だ。特に大学ではイスラム教や中東情勢に関心を持つ学生を標的にしてISに共感を抱くメンターが、学生をジハード戦士に仕立て上げようとした。テロ活動に関与している疑いが濃厚な活動家を日本に招待し、学生に改宗を促した事例もある。

大学の自治は治外法権や無法地帯を意味するものではない。かつてマルクス主義系の過激な思想を持つ教員が、学生を過激派に誘うことがあった。こうして過激派に加わった学生は学業を放棄し、内ゲバに巻き込まれ、人生の可能性を著しく狭めることになった。今後、ISのようなテロ組織が自殺願望をもつ学生を利用する危険を過小評価してはならない。

作家・佐藤優

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