書評

書評家・関口苑生が読む『屍人荘の殺人』今村昌弘著 声も出ないほど衝撃の展開

『屍人荘の殺人』
『屍人荘の殺人』

 魅惑的な謎、先の読めないストーリー、意外な真犯人、独創的なトリック、衝撃の結末…優れたミステリには、必ず読者をあっと驚かせる要素と工夫があるものだ。

 しかし、これほどの驚きと衝撃をもたらし、声も出ないほど唖然(あぜん)とする展開のミステリがかつてあっただろうか。 第27回鮎川哲也賞を受賞した新人作家、今村昌弘『屍人荘の殺人』のことである。

 始まりは、いかにもありきたりな、学生サークルの合宿ものかと思わせる。山中のペンションで、男女十数人の若者たちが、数日間を過ごすのだ。だが、最初の夜、肝試しに出かけた彼らは、およそ想像もしなかった出来事に見舞われ、ペンション内に立て籠もることになる。いわゆるクローズドサークル-外界と隔絶されて、通信も途絶えた閉鎖空間になってしまうのだった。が、これがどんな状況であるかは残念ながら詳しく書けない。何をどう書いてもネタばれになりそうだし、これから読む人の興をそいでしまう恐れがあるからだ。

 選考委員の北村薫は、選評で「野球の試合を観に行ったら、いきなり闘牛になるようなものです。それで驚かない人がいますか?」と記しているが、まさにその通り。ところが、物語はここからさらに深刻かつ異常な事態になっていく。外敵からの脅威に備えて密室状態となった場で、部員のひとりが惨殺死体となって発見されたのである。