映画深層

飛びっきり愛らしい猫たちが伝えるイスタンブールの愛「猫が教えてくれたこと」

 今回は初めてドキュメンタリーに挑んだが、イスタンブールという街と、そこに住む人々の魅力を描きたいと思ったら、必然的にこの形になった。ある街についてニュースなり観光ガイドなりで伝わってくるものは、一つのストーリーだけのことが多く、得てして全体像が見えてこない。

 「この撮影を行った2014年の夏は、イスタンブールにとって特別な夏だった。前年にはゲジ公園の再開発反対運動から反政権デモが発生し、翌年にはクーデター未遂事件が起きた。人々はまだ将来に失望はしていないけれど、何が起こるか分からないという不安な時期だったと思う。クーデター失敗後は非常事態が宣言され、この状態が永遠に続くのではないかと思われているが、それでも人生は続く。テロ攻撃があっても子供は生まれるし、それは世界中のどこの街でも変わりません」

 だから、この愛すべき猫たちと、その猫について幸せそうに語る人々の姿を収めた映画は、むしろイスタンブールの人たちにこそ見てもらう必要があった。この映画を見ることで、対立はあるとしても、多くのものを人々は共通して持っているということに気付いてほしかったという。

 「映画を見て、無理やり考えさせるという強要はしたくないが、前向きに人生について考える経験は必要なのではないか。例えば誰か家族が亡くなったり、自分が病気になったりといったネガティブなときに、そういうことを考えることはあるだろうが、映画はポジティブな状態でじっくり考える時間を与えてくれる。この映画はそれほど真剣に見なくてもいい作りになっているので、ごく自然に人生について考えてもらえたらいいなと思っています」

(文化部 藤井克郎)

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