映画深層

飛びっきり愛らしい猫たちが伝えるイスタンブールの愛「猫が教えてくれたこと」

 ほかにも、旦那を尻に敷くふてぶてしいメス猫のサイコパスや、いつも高級レストランのドアの前でおねだりをしている灰色のオス猫デュマンなど、個性豊かな猫たちが登場する。

 「撮り始めてすぐ、あ、この猫は面白いストーリーになる、という感覚がつかめた。私たちの撮影隊はフットワークがよく、6人でミニバンを駆って移動していたので、1日に何匹もの猫に会うことができたんです。そうして2カ月くらい撮影を続けたところで、だいたい上位10匹くらいの物語が見えてきた。後は住民へのインタビューで足りない部分を補うという感じでした」と振り返る。

哲学を語らせるのに最適な素材

 そもそも最初から猫のドキュメンタリーを作ろうと決めていたわけではない。現在は米ロサンゼルスに居を構えるトルン監督にとって、子供時代を過ごしたイスタンブールは思い出の詰まった特別な街だった。

 「撮影の1年ほど前からイスタンブールに行っていろいろと調査をした。最初は自然ドキュメンタリーにしようかとか、もっと都市にスポットを当てようかとか探ってみたが、気がついたら猫を追いかけていた。哲学的なこと、詩的なことを語らせるには猫が最適だと気がついたんです。翌年に出資者のための予告編を作ったときには、すでに猫を通してイスタンブールの街を語るというものになっていました」

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