夢を追う

お笑い芸人・波田陽区さん 一発屋主人公のアニメを

「2つの夢がある」と語る波田陽区さん
「2つの夢がある」と語る波田陽区さん

 《妻の初美さんと結婚したのは、売れなくなってからだった》

 嫁さんは2歳年上で、元保育士です。僕が熊本学園大の学園祭でアメリカンドッグを売っているときに、「買わなくてもいいから、後でごはんに行きませんか」と口説いたのが最初です。

 僕が上京して、売れないときも年に数回、会っていました。「エンタの神様」でブレイクし、三十路を過ぎてまた売れなくなったときに、結婚しました。

 嫁さんの母親はすでに病で他界していました。義父はシャイな人です。「いいよ」とあまり多くを語らず、認めてくれた。婚姻届の証人には、間寛平さんがなってくれました。その時に僕が名字を「波田」から「大川」に変えました。

 嫁さんには、もちろん不安はあったでしょう。それでも、どんなときも愚痴一つこぼさない。仕事がなく、週に5日も家にいても、「ネタを考えてきなさいよ」といわれたこともありません。僕を信じてくれる。その思いに応えなければと、思っています。

 でも近頃は、このままだとさすがに嫁さんから捨てられるのではないか、との危機感があります。嫁さんにとって、長男が最優先で、2番目は飼っているメダカ、そして僕という順番のようです。

 《福岡で暮らし始めて2年になる》

 最初は福岡空港で働きました。海外で使うWi-Fi機器のレンタル会社の「宣伝部長」に起用されたんです。毎朝7時半から夕方まで、スーツ姿でカウンターに立ち、PRしました。

 去年の夏、リオデジャネイロ五輪で急に仕事が増えました。

 卓球のメダリスト、水谷隼選手と顔が似ていると、ワイドショーで話題になったんです。

 水谷さんは以前から、僕に似ているといわれたそうです。その縁もあって、水谷さんの結婚披露宴で流れたビデオに、サプライズとして出演したんですよ。

 水谷さんが試合で敗れたとき、元SMAPの中居正広さんが、ギター侍のように「残念!」と言ってくれた。それでネット住民が、ざわざわし、テレビ出演のオファーが来ました。

 嫁さんが卓球のユニホームに日の丸の刺繍(ししゅう)を入れてくれ、ラケットも100円ショップで用意しました。

 おかげで、子供の給食費も家賃も払える。うちの家族は水谷さんの扶養家族なんです。

 ツイッターを通じて水谷さんに「おかげさまで仕事をいただいています」と伝えると、「バンバンやってください。でも、今はそんなに似てません。澤部佑(お笑いコンビ『ハライチ』)に似ているといわれますから。残念!」と反応がありました。

 《福岡を拠点に、営業で九州一円を奔走する》

 今は福岡のテレビや、山口のラジオに出演しています。営業に行くときは、ギター侍になります。

 ギター侍というキャラクターにいまなお、かじりついて甘えている。そんな自分がいるのは分かっています。

 それでも、2つの夢を実現させるには、ギター侍をやるしかないと思っています。

 一つ目の夢は、福岡でレギュラーの帯番組を持つこと。もう一つはアニメを作ることです。一発屋の芸人がヒーローとなり、笑いがなくなった世界を救う、という物語です。

 長男が生まれ、一緒にアニメを見ていると、「こんなに笑顔にする力があるんだ」とみせつけられました。

 一発屋という肩書をもらったばかりに、世間からないがしろにされ、悲しい思いをしている芸人仲間はたくさんいます。そんな一発屋芸人が登場し、「アンパンマン」のように愛されるアニメを作りたい。仲間の皆をアニメで幸せにして、年を取りたいんです。

 長男からも「僕のお父さんは波田陽区なんだぞ」って胸を張って言われるようなおやじになりたいんです。そのためにギターを抱えて、きょうも頑張ります。(聞き手 村上智博)

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