糸魚川大火 元ラーメン店主に有罪 「今後の人生で償い」 新潟

 昨年12月に糸魚川市で発生した大火の火元となり、業務上失火の罪に問われた同市大町のラーメン店の元店主、周顕和(けんかず)被告(73)の判決公判が15日、新潟地裁高田支部で開かれ、石田憲一裁判長は禁錮3年、執行猶予5年(求刑禁錮3年)を言い渡した。閉廷後、弁護側は控訴しない方針を報道陣に明らかにした上で「糸魚川の皆さまに対する償いのため今後の人生を歩んでいく」とする周被告のコメントを公表した。(太田泰)

 判決によると、昨年12月22日、周被告はラーメン店の調理場でタケノコと水が入った中華鍋をガスコンロの火にかけたまま外出し、鍋の中身を発火させて同店を含む147棟、計約3万平方メートルを焼損させた。

 判決理由で石田裁判長は、周被告が以前にも火元から離れて鍋の底に穴を開けたケースがあったとした上で「住民の生命、身体、財産に極めて大きな危険が発生し、被害の程度は甚大。料理人としてはもちろん火気を扱う者として注意義務違反の程度は著しく、重大な結果は起こるべくして起こったものと言わざるを得ない」と指摘。ただ、当時は延焼しやすい気象状況だったことに加え、社会的な制裁を受けているとして執行猶予を付けた。

 9月27日の初公判で、弁護側は「強風で延焼しやすい状況だった」として情状酌量を求めていた。

 判決の言い渡し後、石田裁判長は「結果が大きすぎて正面から向き合うのは難しいかもしれないが、責任は取らなくてはならない。糸魚川への償いと恩返しのために何ができるのか、家族と相談しながら考えてほしい」と説諭した。

 灰色の長袖トレーナーにカーキ色のズボンという服装の周被告は頭をやや下げながら聞き、小さくうなずいた。また公判の冒頭で裁判長から付け加えたい発言があるかを問われると「別にありません」と答えるなど、終始淡々とした表情だった。

                   ◇

 ■市民複雑「憎しみ薄れた」「失態許せない」

 大火で被害に遭った糸魚川市の市民は15日、複雑な思いで判決を受け止めながらも、まちの復興や生活、事業再建を目指して前を向いた。周顕和被告を思いやる声も聞かれた。

 大町区の斎藤伸一区長(67)は「有罪判決が出ても焼け出された人たちの悲しい思いは変わらない」と被害の甚大さを指摘。その上で「新生活に希望を持つ被災住民も多く、被告への憎しみは薄れてきているようだ」と話した。

 同市大町の自宅が全焼し、市内の県営アパートに住む会社員、小池邦彦さん(57)は「執行猶予は予想していた。本人から謝罪を直接受けており『罪を憎んで人を憎まず』の心境。自宅も来春新築できるめどがつき、心が和らいできている」と話した。

 糸魚川商工会議所の山岸美隆副会頭(62)は「被害はかなり大きく、思うところもあるが、被告は出された判決に従ってほしい」と要望。全焼した同市大町の老舗酒蔵「加賀の井酒造」の18代蔵元、小林大祐さん(35)は「受け止め方は人によって違うと思うが(周被告に)負の感情を持っても現実は変わらない。判決が出たことには一つの区切りを感じる」とした。

 自宅兼精肉店が全焼し、現在は市議を務める平沢惣一郎さん(76)は「被災者が納得できる判決。当時は風も強く消火態勢が整うのも遅れたので、被告だけに責任を負わせるのも酷だ。市内に居づらいだろうが元気に頑張ってほしい」と周被告を思いやった。

 一方、被災地の近くに住む主婦(74)は「鍋に火をつけたまま外出した失態は許せない気持ち」と憤りを隠さなかった。別の主婦(70)は「火事を教訓に、みんなで力を合わせて頑張るしかない」と話した。

                   ◇

 ■被告コメント要旨

 周顕和被告が弁護人を通じて発表したコメントの要旨は次の通り。

 判決を厳粛かつ真摯(しんし)に受け止めております。今回、私の不注意による失火で、糸魚川の皆さまに多大なご迷惑をおかけしてしまったことを、改めて心よりおわび申し上げます。大切な家、お店、思い出の品々を失わせてしまったことは決して許されることではありませんし、大変申し訳なく思っています。

 糸魚川の皆さまのために自分ができることを懸命に考えております。糸魚川の皆さまに対する償いのために、今後の人生を歩んでいく所存です。本当に申し訳ありませんでした。

会員限定記事会員サービス詳細