上海余話

1日14万件? 「密告社会」再び

北京の天安門で、毛沢東の肖像の前に立つ人民武装警察部隊の隊員=10月25日(田中靖人撮影)
北京の天安門で、毛沢東の肖像の前に立つ人民武装警察部隊の隊員=10月25日(田中靖人撮影)

 中国のインターネット空間を舞台に密告が急増している。中国当局が管轄する違法通信告発センターによると、政権批判や違法集会、賭博やポルノなどに関するネット上の問題発言が、9月には415万件通報された。前年同月比で60%も増えたという。

 スマートフォン中心に7億人のネット利用者がいる中国。誰かが誰かを監視した結果、1日あたり14万件も通報している計算だ。ネット企業が報酬を出す監視員を公募したことも通報急増の背景のひとつ。多くは削除され、一部は特定された発言者が罰せられる。

 6月施行の「ネット安全法」や10月施行の「ネット集団管理規定」などで矢継ぎ早に規制。中国版LINEの「微信(ウィーチャット)」で、友人など連絡グループの中で誰か1人が通報されると、発言者のみならずグループ発起人まで処罰されるという厳しさ。

 中国では1966年から10年以上も続いた「文化大革命」期に、友人や自分の家族まで裏切って「反革命的な言動をした」などと密告しては、公衆の面前に引きずり出して罵倒し、暴行することが日常だった。

 互いに監視させる「密告社会」。再び人民に恐怖感を植え付けて独裁を強めたい為政者が、この国のどこかにいる。(河崎真澄)

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