手錠と腰縄をつけた姿で入退廷させられたのは、個人の尊厳を傷つけ、憲法に違反するとして覚醒剤事件の被告だった30代と40代の男性2人が国を相手取り、計50万円の損害賠償を求める訴訟を13日、大阪地裁に起こした。
勾留中の被告は手錠と腰縄姿で入廷し、裁判官の指示で外されるのが一般的。刑事訴訟法が法廷での身体拘束を禁じる一方、刑事収容施設法では、逃亡や他者への危害の恐れがあれば護送中に手錠と腰縄を使うことができると規定し、現行の運用方法が定着している。
訴状などによると、2人の弁護人はそれぞれ初公判前から、傍聴人などに手錠や腰縄をされた姿が見えないよう入退廷時の遮蔽措置を講じるよう申し入れたが、裁判官が認めなかった。2人は大阪地裁で今年5月、覚せい剤取締法違反罪で有罪判決を受けた。
原告側の代理人弁護士は「手錠や腰縄は罪人の象徴。その姿を他者の目にさらされるのは屈辱的で、憲法が保障する無罪推定を受ける権利も侵害している」と訴えている。
法務省矯正局は「訴訟が届けば適切に処理する。現時点で運用を変える予定はない」としている。