書評倶楽部

コラムニスト・上原隆 オバマ氏も愛読、誰もがうらやむ夫婦が… 『運命と復讐』ローレン・グロフ著、光野多惠子訳

【書評倶楽部】コラムニスト・上原隆 オバマ氏も愛読、誰もがうらやむ夫婦が… 『運命と復讐』ローレン・グロフ著、光野多惠子訳
【書評倶楽部】コラムニスト・上原隆 オバマ氏も愛読、誰もがうらやむ夫婦が… 『運命と復讐』ローレン・グロフ著、光野多惠子訳
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 夫婦生活を何年も続けていると、相手のことは全てわかっているような気持ちになる。が、いったん関係にヒビが入り、何日も口をきかなくなったりすると、たちまち相手のことがわからなくなる。夫婦って何だろう?

 本書は夫婦生活を描き、全米図書賞の候補となり、オバマ前大統領も愛読したという話題の長編小説だ。2つに分かれていて、前半は夫の側から、後半は妻の側から書かれている。

 ロットは裕福な家の出で、みんなを笑わせる明るい二枚目だ。多くの女性と関係をもった。そんな彼の前に、運命の女性、マチルドが現れ、結婚する。ロットは彼女を一途(いちず)に愛す。やがて彼は劇作家として成功し、2人は誰もがうらやむような夫婦となる。ところが、なぜか彼女は彼の親と会おうとしない。

 一方、マチルドは両親に捨てられ、親戚の間をたらい回しにされ、学費を得るために体を売ることさえしていた。長い間孤独だった。体の奥には復讐(ふくしゅう)の怒りがあった。結婚して、もうひとりではないというマチルドの思いが、夫を支え、彼を世に出す力となった。背後には、夫の知らないところでマチルドと夫の母との確執があった。妻の側から見ることで、少しずつ謎が解き明かされていく。

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