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東アジア情勢について日米間でかくも議論のかみ合った首脳会談があっただろうか。外務省で日米安保を10年担当した筆者も、にわかには思い付かない。1980年代のロン・ヤス(レーガン・中曽根)関係の焦点はソ連の脅威、2000年代のブッシュ・小泉関係はテロとの戦いが中心だった。衝動的な発言で知られるトランプ氏との会談で、対北朝鮮政策だけでなく、従来日本が主張してきた「自由で開かれたインド太平洋地域」の推進にサプライズもなく合意できた理由は一体何だったのか。両首脳の個人的関係はもちろん重要だが、ゴルフをやったぐらいで会談が成功するほど国際関係は甘くない。
アジア歴訪開始直前の記者会見でホワイトハウスのNSC(国家安全保障会議)担当大統領補佐官が漏らした次の一言が全てを物語っている。「大統領は今後も彼が望む言葉を使うだろうが、そのレトリックは同盟国・友好国に大きな安心を与えるものだ」
これを筆者なりに勝手に意訳すれば、次のようになる。「大統領が何を言うかは知らないが、われわれNSCが作るレトリックが米国の政策だから同盟国は安心してほしい」。キーワードは「安心を与える」だ。トランプ政権の東アジア政策をめぐっては3つの潮流がある。