ところで、話は10月30日にさかのぼる。
首相公邸で開かれた安倍首相夫妻主催の晩餐(ばんさん)会でスピーチをしたドゥテルテ氏は「ちょっとおなかがすいてきましたので、原稿の次の2枚のページを飛ばしまして、最後のページに行きます」と述べて、会場の笑いを誘った。
実はこの晩餐会は直前の首脳会談が予定を超えて長時間に及んだため、開始が約1時間遅れていた。
自分の空腹を理由にドゥテルテ氏がアドリブでスピーチを早めに切り上げたわけだが、後日、日比外交筋に聞くと、フィリピンの事務方が用意した原稿があまりにも長かったため「全部読み上げれば、多くの人をさらに待たせてしまい申し訳ない」との配慮からだったという。
暴言王はTPOをわきまえるのはもちろん、存外、周囲に心配りができる粋な人物でもあった。
(政治部 原川貴郎)